生ハムと暮らしている

すぐ忘れるので文字にしよう

現世の幽霊

10/15

久しぶりにタブレットを出してきたので、過去無料になっていてダウンロードした短編などを読みながら通勤する。

予想以上にさっぱりとして短い小話に気持ちがすっきりする。

あまりに短かったので山本周五郎集も読み始めるが、こちらもこざっぱりした話。

重たい話はしんどいけれど、さっぱりした話でも満足いかない、いやなからだになったものだ。

 

翌日からオフィスが変わるというので、置いていた荷物をすべてさらって会社を出た。

社会人になって初めのころは、お菓子やらマグカップやらカレンダーやら、細々と自分の匂いがする持ち物を置いていたように思うが、いつからか無味乾燥な黒いポーチを用意してそこに入るだけのものをまとめるようになった。

仕事のしかたが変わったこともあるが、この月日でオフィスで過ごす時間への興味が失われたことも強く感じる。

自分で言うのもなんだが、近ごろ仕事において非常に評価されている。でも、興味が、ないのだな…。

以前に比べて興味の失われた仕事をすることがそこまで苦痛ではなくなり、かつてのような強烈な抑圧は感じないが、直近異動の予定があるので(つまんないなとは思っていたから自分で希望を出した、12月発令だそうだ)明日からのオフィスでもがんばろ~。ほどほどに~。

 

家に帰って、わりとちゃんとしたごはんを食べた。

 

あっちこっちに飛び回り、しばらく不安を感じていた暴れ馬のような食欲についてだけど、また定期的に玄米を食べ始めてから地についている気がする。

それと、昨日恥ずかしい日記についての所見を書き示したことで、何かが整理された納得感も。

いつもの感覚だと、あのまま過去の感情の狭間に注意を残してきたら、数日や数週間くらいは平気で現世の幽霊になっていたろう。

 

食欲にせよ回顧にせよ、単に流れた時間によるものかもしれないけれど、行動で情動を治めることは生きやすさのメソッドと感じつつ不得意とするところなので(筋トレは人生のすべてを解決する、みたいなのは本当だと思う。尽力します)、ひとつ強者に近づいた気がして頼もしい。

 

▼わりとちゃんとしたごはん

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不格好な想像力のなか

10/14

魔が差して学生時代にしたためていた日記を見返してしまった。

とるに足らないできごとで傷ついている。

(「とるに足るか」なんてアメーバみたいな基準からしてみれば、まあ、今現在だってそうなんだけど)

 

稚拙な言葉が生々しく、その時間、その季節をもう一度描くことができる。まだ読み返していないもっと過去の日の景色も思い出せるくらいだ。

やはり書いておくものだな。

 

遡れば遡るほど、どんどん小さなできごとを大きな虫眼鏡で見つめて笑ったり泣いたりしているのがわかる。幼い私は何もかもコントロールできずに暴れて傷ついてばかりいたように思うが、それをばかばかしいとは笑えない。傷つく必要なんてなかったけど、今となってその傷がない自分も認めることはできない。今でも、中学生のころ生徒会に立候補するとき応援演説をしてくれた先輩に変な人見知りをしてうまく感謝を伝えられなかったと自分をひどく責めた夜を何度も思い出す。小学生のころ、自分が死んだ世界を強く想像して暗く深い地中から世界を見て声も出せず何の干渉を受けることも与えることもできない無力さに冷めざめとしたことも。

不格好な想像力のなか生きていたのだ。

 

ささやかな夕食をとり、一服しにいく。やはり寒い。

お香を焚いて、ラジオでミスチルの韻の踏み方について学び、ミルクティーを飲んだ。

エイリアンズをループで流し、秋鮭をゆっくり焼きながら、食器を洗う。

ぼんやりと考え事をしながら軽い運動をする。

悪くない日常だ。

一般的な「わりとよい」の意味ではなく、純粋に「悪いことはしていない」という程度に。

 

▼いつも同じタイトルだった日記

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いつか眠らないわけにはいかない

10/13

朝職場に行ったら、知らないえらい人がいて案件の話をしたいと言われた。

3分くらい話したら「明日から来られる?」とのこと。いや~月曜日に切れてた定期買いなおしちゃったんだけどな。まあいいけど。

なんだかんだ今の職場で働いててまだ今すぐ辞めようとしてないのは、こういうところだと思う。飽きっぽいので、サプライズはありがたい。

 

日中、猛烈に眠い。

普段そのようなことはあまりないのだが、てんでだめだ。

一度気持ちを切り替えようと、少し関係ないことをしてみて、眠気もましになったかなと仕事の画面に戻ると途端に俊足の睡魔。

現金なものだ…。

 

夜、久しぶりに煙草を吸った。

毎年夏になると酒の席などで吸いたくなるものだが、今年はそういった場面もなく。

昼間が暖かったので、ベランダが気持ち良いのも最後かなと外に出た。ほんと高級品になったよ、君。

 

ただ出たら出たでやはり肌寒く、ゆったりすることなくそそくさと部屋に戻った。余韻がかわいそうな気がして、コーヒーをいれてチョコレートを2つ出す。煙草をやめると甘いものを食べてしまうなどと言うが、そんなのは関係ない。甘党はいずれにせよ食べる。

 

先週くらいから、なんだか脳みそがぼんやりしていて、曖昧な焦燥感がある。

冬が近づいてきたからだろうか。

夜が長くなって身体が早く眠ろうとしているのに、実際には準備もしていないし本当は眠りたくなんかない。でもいつか眠らないわけにはいかない。そんな感じ。

 

冬の装いが好きだ。

早くお気に入りのニットや凝ったジャケットを着たい。

ラジオを聴きながら暖かい牛乳にアマレットを垂らしたり、熱すぎるホットワインが冷めるのを待つのだ。そしてキリンジのエイリアンズを夜中流して眠る。

日記にまとまりがないのも肌寒いせい。

 

▼最後のマフィン。ひと口かじってからあわてて写真を撮った。3つめのチョコレートマフィンは撮るのを忘れた

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神様なんていない

10/12

昨日はなんだかすっかりやり切った気がして、さっさと寝てしまった。

 

先週で一通りの仕事が終わったが、今日は何をするのだろう。

金曜日に指示を仰ぐ人間が誰もいないまま終業時間になってしまったので、とりあえずいつも通り出社する。

 

案の定あまりやることがなく、とりあえず「ぽい」資料を開いて読んでみる。すぐにやることがなくなる。

Excelを見てるふりをしながら、部屋の収納について考えていた。

やっぱり建具頼りなのはよくない。どんな場所でも柔軟に生きていけるやり方を確立せねば。

 

昨夜ちらっと見ていた、天井へのつっぱりによる壁面収納を利用した場合のシミュレーションをしてみる。

Excelの行と列を方眼状になるよう調整して、1マスを90cm角と仮定した6畳や7畳程度の空間をつくってみた。ベッドは2マス、テーブルは1マス、ハンガーラックは幅2マスゆき半マスといったところか。ふむふむ。

会社のPCに謎の図面がどんどん描かれていく。

 

今時そんな賃金の使い方をする会社があるか知らないが、窓際族ってこんな感じなんだろうな。いいな~~~。

 

結局ただ職場に来てぼーっとしただけで帰宅。

週末にできなかった洗濯をして、ちょっと本を読んで、シャワーを浴びて、筋トレしてあとは寝るだけ。

何をやっているんだろうな、私は。

人生をかけて、基本的に私のモチベーションは短期的なやる気と長期的なやりたくなさに集約されており(長期的に何かをやらなくて済むためなら初動は惜しまないタイプ)、どこかに向かうための継続的努力やタスクの積み重ねを一切してこなかった。

これもひとつの特長なのだろうが、あまり褒められた試しがないので時折虚しさを感じないでもない。

一方通行の道徳的概念を忘れられないとどんどん自分を嫌いになってしまう。

神様なんていない。

 

▼朝スヌーズを止めようとしたら部屋の写真を撮っていた

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景色はすべて眼下になった

10/11

昨晩深夜に同居人が泥酔して帰宅しており、私が眠い。酔って寝るからってあんなに寝言いうやつがあるか。

以降必要に応じてルールを決めよう…。

 

今日は海へと向かう。

海沿いの家を人に紹介する用事があるのだ。

 

1時間ほどまとまって電車に乗るのに、眠い眠いと嘆くが存外眠れないものだ。ぼんやり音楽を聴いたり本を読みながら電車に揺られた。

 

駅で人と待ち合わせて、家への路を歩く。

到着してみれば、変わらぬ戸建であった。暮らすには決して便利ではないが、過ごすのには悪くない、小高い窓から大きく海が見えるのがよい。

もともと話だけで随分気に入ってくれていたが、そのまま意思は変わらないようで安心するやら感心するやら。

簡単に家を空ける時の説明などをしたあと、お茶を飲みながら休憩し、荷解きが済んだところでもう一度支度をし家を出た。

 

駅へと歩き始めたところで岬まで歩けることに気づき、散歩を提案した。来た道を戻り、さらに先へ向かう。

曇りきってはいるが空気はさらさらしており、霧雨より重く小雨より軽い粒が降る。なかなか止まない。

 

しばらくは予想に反しない地方の町の端々が続くが、じきに海沿いに出た。

それから岬に向かう途中には、暗く冷たいトンネルがあり、いつも波の声がして、上からはだだっ広い空か木の葉の影だけが落ちてくる。鳥が音もなく滑空する。

少しの傾斜を登ればそこには灯台があり、景色はすべて眼下になった。

 

知らない草木の密集になにかを感じて、急にため息が出る。

 

ここにもまた湿った風が煩わしい季節や、寒さに耳を震わす季節が訪れるだろう。

知らない草木も生えては枯れ、砂浜から聞こえる声が増えたり減ったりするはずだ。

私が賑やかな街や眩しいビルに挟まれてベルトコンベアみたいな平日とジェットコースターみたいな休日を過ごす間にも来ては去っていくそれは同じ季節か。

 

同じ季節だ。

どこにでも流れている。

今は、私には私の時間が流れるしかない。ここが誰かにとってのいい季節を過ごす町だということに救われる。

 

▼湾曲する海岸線

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私にも残されているだろうか

10/10

味噌汁を1週間かけて飲み続けている。

朝、まだご飯を食べるつもりではないけれど傷むといやだなと思い鍋を火にかけた。

いい匂いがしてくる。

 

やはり食べることにした。

味噌汁はいい。

毎日飲んでも飽きない。夜、家に帰って味噌汁があると、安心する。

そしてこの味噌汁は週の半ばで安売りされていた銀だらのあらを足したのでとてもうまい。

 

ふと、友人との暮らしを思い浮かべた。

遊牧民の夢潰えた友人が、直近共に暮らすことは現実的に可能か?と提案してきたのだ。

 

彼女はこまめに自炊するタイプだが、自分の飯は美味しいと思わないと言う。 

私がこの味噌汁を出したら何というだろう。

美味しいと言って飲んでくれるかもしれない。でも私が料理担当になったら嫌だな。料理は好きだが料理ばかりしたいわけじゃない。それに比較的上達したのも長く続けてきたからだ。なんとなくそれを搾取されたくない気持ちもある。

 

練習は投資だ。初期投資。

弁当を買ってきたほうが短期的には安上がりだし、初めのうちなんかは時間がかかるうえに大して美味しくない料理を食べなければならないのだ。それに続けていけば、新しいキッチンツールや調味料が欲しくなる。

 

その時間や費用の捻出が出来ないという判断、もしくは出来るけどしない判断があることも理解できる。

なんだかんだ、一人暮らしを開始したときに最低限のキッチンツールを置けたこと、なんとか自炊する体力があったという環境の余裕は恵まれたものだと思い返す。

 

うだうだ言っているが、要するに真面目に考えているのだ。友人との同居を。直近で実現可能かはわからない、難しいかもしれないとも思ってはいるが、そんな未来を想像する。私にも残されているだろうか。誰かと生きていく人生が。

 

▼かぼちゃのマフィンとコーヒー 

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好き放題するけど、快活で誰も傷つけない

10/9

通勤の道すがらにあからさまな秋の証明。ひまわりはすっかり俯きが板について、金木犀が台頭している。

雨が続くので、きっと週末を過ぎたらオレンジの絨毯が敷かれることだろう。

 

帰り道、自宅最寄りに到着しミスターミニットに寄ろうとしたら開いていなかった。19時に店を閉めるらしい。

商店街の中にある靴・鍵の店が親切でお手頃なのだが平日休日にかかわらず営業時間が短いのが玉に瑕で近頃立ち寄っていなかったところ、いつでも行けると思っていたミスターミニットがこの営業時間ならばもはや差はない。

営業自粛はこうした大手チェーンの差別化にも影響を及ぼすのだな。

 

ミスターミニットの隣が小さな輸入食品店(以前紅茶を購入した)なので目に入る。いつも入り口を飛び出して軒先にはよく売れそうなシリアルやスナック菓子などが配置されているが、今日はさらにスペースが拡大され、リンゴ箱のような質素な木箱にどでかいマフィンやベーグルが積まれていた。

コストコで売ってるやつだ。行ったことがないので当然見たこともないけれど、人間に共通した「コストコに売ってるマフィン」という認識を具現化したらこれになると思う。

4つの味のセットと、1つずつ小分けの袋がある。

点々とかぼちゃの種がまぶされた、モルモットくらいはあるでしょうというマフィンがなぜか猛烈に羨ましい。が、小分けの袋には見当たらず、セットの中にしか入っていない。

小さな店先でたっぷり3分ほど想いを巡らせ、4つのマフィンを買った。気持ちが昂る。

 

帰宅。

食べ合わせは最悪だが、可愛い豚バラブロック(追って角煮風の味付けをしたが調理が雑なので決して角煮ではない)を3切れとビールを頂き、その後温めたマフィンとコーヒーを用意しデザートとした。

こういう自由さを表現する熟語が、今でもしっくりくるものがない。

細かいことを気にせず、好き放題するけど、快活で誰も傷つけない感じ。

 

豪快奔放、という四字熟語が比較的近い気はするが(そもそも豪快と奔放をくっつけただけというおおらかさがよい)、もう少しシンプルな言い回しがなかったかなあ。

 

▼バナナマフィンとコーヒー(かぼちゃのやつは後に取っておく)

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