生ハムと暮らしている

すぐ忘れるので文字にしよう

寒さは人をうるさくさせる

12/13

3時間未満の就寝時間。

温泉に入りたい一心で目覚め、沈黙のなか粛々と風呂に浸かる。あったけえ、ありがてえ。今日は貴重な休日で、友人らは方々の土地からこの旅行のために集まっていて、そしてこんなに眠くて、けれど風呂への並々ならぬ意欲で暖かい湯に入っている。なんかおもしろい。

 

旅館の朝ごはんは豪華である。

数時間前まで酒盛りしていたのに、信じられないくらいもりもりの朝ごはんを食べる。

固形燃料のうえで小さなひとり用の窯で焚かれた白飯は、茶わんに2-3杯はゆうに入っていたが、お残しへの強烈な罪悪感で食べきった。以外といけるな。

 

せっかくだから観光をしようと、密を避け牧場へ。

大人になってから、動物を見る目が変わったなと思う。子どもの目線だと、そもそも人間の大人も「すごいやつ」で、車も飛行機も「すごいやつ」なのだが、大人からみると当然大人も車も飛行機も「すごくない」。だからふだん間近に見ない動物がいっそう「すごいやつ」に思えて、捕食されないよう広い範囲を見渡す横長の瞳孔も、四つ足で走ることに特化した筋肉も、自分が同じ目や脚を持っているからこそ差分に目を見張る。

 

まだ昼食までには胃が暇を欲しがっているので、観光マップを眺め山上の湖を目指した。

山上の湖に到着するすると激烈に寒く、というか雪が降っていた。こんなペラペラのワンピース着てるのに…。戦闘力が低すぎる。

でもみんなも寒かったようで、寒さに咆哮をあげる。解決するために自分にできることがなさすぎて、どうしようもなさで大声を出した。寒さは人をうるさくさせる。

こんなときこそアレじゃない?とかつてよくやっていた(それも変な話だが)伝統的なおしくらまんじゅうをしようと数名で駆け寄るが、あまりの密にハッと気づき慌てて離れ、自然発生的マイムマイムみたいになった。

 

昼過ぎにはうどん屋が立ち並ぶエリアにやってきた。

地域としても目玉にしたいのだろうと明らかで、幾つも続くうどん屋はどれも小奇麗な外観写真が掲載されている。うちの1軒に入るが下駄箱や行列捌き、注文から配膳までの待ち時間もほどよく見事だった。

腹ペコではないが食い意地だけは一人前なので、テーブル内でいかに最大効率で食べたいものを摂取できるか相談し、小盛うどんのグラム数とサイドの天ぷらの大きさを眺め比べ、4人テーブルでベストの分け前を宛がうことができた。近年稀にみる最高の配分だった。(この配分が活きて、往路で見かけた焼き饅頭もしっかり腹に収めることができた)

 

ここまで来たら悔いはなく、ショートスリープひたひたの体力でスッと帰路についた。

高速に乗る前に道の駅的なものがあるということで皆で立ち寄り、”家”感の強い饅頭と謎のお菓子、特大のブロッコリー、皮付きの干し芋を抱えて帰る。

 

各地から集合した友人らはまた各々の地に戻っていった。

高速を降りてひとり、ホームに入ってまたひとり、路線を違えて散り散りに。

解散はここまでの盛り上がりとは翻ってとことんあっさりしたものだったが、また必ず会えるのだから、こんなものでいいのだ。これからもよろしく。

 

▼寒いねと話しかければ寒いねと答える人のいるあたたかさ(俵万智

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