生ハムと暮らしている

すぐ忘れるので文字にしよう

その価格と体積を引き換えに

12/19

フォローしている(SNSのアカウントをという具体的なことじゃなく、元の意味で、もろもろの活動を継続的に追いかけていて尊敬している)陶芸作家さんの展示に行った。

銅を焼き付けて酸化させている(確か)という作品作りをしている方で、夏の展示で初めてその技法を目の当たりにし、酸化銅のブロンドと虹彩が美しい花瓶を買った。その際、青銅の厚い焼き付けと複雑な表情の数点の作品もとても素晴らしかったが、器としてそれらが何かを容れている場面を想像できなくて、悩んだ挙句購入は見送った。

今回はブロンドの器たちは隅に追いやられ、青銅の瓶や箱・オブジェなどの観賞用に向いた作品、また人気のある硫化銀彩の普段使い用の器が大量に並んでいる。

青銅の作品はとても美しいが、前回の展示から比べると比較的安定して色が出ており、作品の種類がたくさんあるために造形にチャレンジをしているようにも見え、球体のオブジェや植物を押し付けてシルエットを凹ませたアートパネル、円状の特大のトレイのようなものなどが続く(いわゆる陶芸作家の作品として、私はこのような形状のものを見たことがない)。

 

結局、既に自分が購入した花瓶を超えられるものが見つけられず(クオリティの問題ではなく個人の好み)、また前回感銘を受けた青銅の質感が異なる様相を見せ落胆し(これもまた好みに帰結する)、ただまた次の訪問では更なる期待のベクトルの違いが発生する可能性もあるので、今の創作の証跡だけでも手に入れたく、小石のような作品を購入した。

あまり詳しく話を聞かなかったが、これといって決まった目的があるものではないようで、土を掌でぎゅっと押しつぶした塊。虹彩の煌めきが強いものをひとつと、斑の青銅が焼き付いたものをひとつ。

インテリアでいわゆる置物、オブジェみたいなものを買うというのは私個人としては非常に勇気のいるもので、ギミックがあればストーリーやリーズナブルさというのが生まれて自分で自分にその購入の価値を説明しやすいのだけど、ただの鑑賞用の物体にその価格と体積を引き換えに家のスペースを占有させるという行為はなかなか高尚なものだ。

今回はその数少ない貴重なチャンスを手に入れたことになる。

 

神楽坂のドローイングの個展に寄ったあと、青山のスパイラルビルのクリスマスの展示に訪れた。

こちらも作品を定期的にチェックしているイラストレーターのグッズを見るために来たが、直近週ごとに発表されていた数十件のアートワークを試作的に印刷に回したらしく、少々単価の高い大量のポスターが商品化されていた。

近年かなり好きなイラストレーションだったため、商品化されたものは比較的買い集めてきたが、これは供給が多すぎてコレクションは難しい。

定期的に外向きの仕事が舞い込むアーティストなので、この人が持つ刹那的な作品のクオリティが、それを上昇も低下もさせることなく仕事の数だけ量産されている。素晴らしい仕事人だがフォロワーとしては自分の預かり知らぬ場所へ先に先にと進んでいくようで。だからなにと言うこともないのだが。

 

最後にIKEA渋谷に立ち寄ってから帰った。

IKEAのことは大好きだが、都心部で小金を巻き上げる今の方針にちょっと不服を感じつつ、でも新店舗である渋谷のノベルティアートワークが可愛くて腹が立つ。

この時期に密に飛び込む自責とノベルティへの邪な気持ちを複雑に絡めあいながら、インターネット上の入場整理券の許可を得て店舗に入った(到着するころにはもはや入場整理はされていなかった)。

普通に必要なものを手に取りレジに向かうと、悲しきかなノベルティの配布は終わっていたらしい。大きな感情の起伏はないが、なんとなく居心地が悪かった。

 

▼いい、すごくいい

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